2016年12月29日木曜日

社説:辺野古工事再開 沖縄の声無視するのか 2016/12/28

辺野古工事再開 沖縄の声無視するのか

再開前に翁長雄志(おながたけし)知事は菅義偉官房長官と面会し、沖縄との事前協議を求めたが菅氏は拒否した。

 翁長氏は国勝訴が確定した先の最高裁判決を受け、埋め立て承認の取り消しを撤回したものの、他のあらゆる権限を使って移設を阻止する姿勢は揺らいでいない。

 沖縄の声を無視し、判決を錦の御旗とするかのように工事を再開した政府の姿勢はあまりにも一方的であり、地方自治を踏みにじる強権姿勢と言わざるを得ない。


 翁長氏が一貫して掲げるのは、沖縄が背負い続けてきた過重な基地負担の歴史を背景に、知事選、国政選挙などで移設反対派が勝ち続けた「オール沖縄」の民意だ。

 民意に背く新基地建設の強行は憲法が保障する地方自治の侵害だと最高裁への上告でも訴えたが、判決はそこは素通りした。

 安全保障政策は国の所管といっても主権者は国民である。住民の切実な声や地域の代表である知事の意向に、司法や行政が耳を傾けなくていいはずがない。

 力ずくの政府の姿勢は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設を強行し、新型輸送機オスプレイの事故から6日後の飛行再開を容認したことにも表れている。

 翁長氏は先週、政府が主催した北部訓練場部分返還の式典を欠席し、同じ日に開かれたオスプレイ事故の抗議集会に出席した。

 政府は訓練場返還や辺野古移設を「基地負担の軽減」と強調するが、いずれもオスプレイの運用を前提にしている。沖縄から見れば「基地機能の強化」であり、「危険のたらい回し」と映る。
 不平等さが指摘される日米地位協定にも似たような構図がある。

 日米両政府は一昨日、在沖縄米軍属の男が起訴された女性暴行殺人事件を受け、軍属の対象範囲縮小に向け地位協定を補う補足協定を結ぶことで実質合意した。

 多少の改善としても、県が求めるのは地位協定の抜本改定だ。

 政府に求められるのはこうした溝を埋めるためにも真摯(しんし)な対話を重ね、沖縄の声を受け止めて米国にもの申すことのはずだが、逆に米国の顔色をうかがうような姿勢ばかりが目立つ。

 安倍晋三首相は米ハワイの真珠湾への出発前に「オバマ大統領と共に強化してきた同盟の価値を世界に発信する」と述べた。日米同盟は沖縄の犠牲の上に維持されている現実を忘れてはならない。