2017年2月7日火曜日

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(4) 沖縄大非常勤講師・親川志奈子さん(36) 2017/02/07


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2017年2月7日 東京新聞


沖縄は全体の利益のために犠牲になれという考え方や、嫌なものを見るような沖縄へのまなざしはこの十年ぐらいで強まっている。ウチナンチュ(沖縄人)の苦しみや抑圧された現状への抵抗さえも、勝手な解釈をされたり、ウソのストーリーに書き換えられたりして、ネット上や一部メディアで流布されている。

 米軍基地を県内移設、つまりたらい回しにし、墜落したオスプレイも飛ばす。でも安全だし、負担軽減だという話になってしまっている。その政府の態度を補強するかのように、沖縄ヘイトがどんどん出てきている。

 沖縄の問題に関心を持った人は、結局、負担を押しつけている日本人の責任問題だと気付く。これまでは知らないふりを決め込んで、差別者としての状態を維持してきた人が多かった。今はさらに一歩踏み込み、「黙れ」と。反対すると「中国の回し者」「日当をもらっている」と。ネット上には「沖縄が犠牲になるのは当然で、それが民主主義だ」とまで書き込まれている。


 在日コリアンの人たちが沖縄の問題に関わると、今度は沖縄ヘイトをネタに使って在日コリアンへのヘイトが助長される。日本の中でマイノリティー(少数派)を生きるということがヘイトの対象になる構図で、とても憂慮している。

 抑圧者と被抑圧者というポジションを確認したうえで対話していく必要がある。例えば平和運動に取り組む県外の人は、翁長さんが知事選に勝って喜んだが、基地の県外移設論は黙殺する。基地反対運動に対峙(たいじ)する沖縄県警の機動隊員たちを「恥ずかしくないのか」とののしる。
 その意味では左翼であろうと、右翼であろうと、沖縄へのまなざしは抑圧的と感じる。あからさまにぶつけられる沖縄ヘイトもあるし、平和運動の中でも沖縄の声がきちんと聞かれないという沖縄差別がある。

 日本政府の政策が、捨て石にするような方法でしか沖縄を利用していない。かつて日本国憲法のもとに帰ろうと復帰運動をしたが、人権や平和は二の次のまま。その憲法も今や変えられようとしている。今のままでは希望が見いだせない。期待がもてそうにない状況の中で、異なる政治的地位を選択する方がベターではないかと考える人たちが沖縄独立論を語り始めている。

 <おやかわ・しなこ> 1981年生まれ、沖縄市出身、那覇市在住。沖縄大非常勤講師。2013年設立の琉球民族独立総合研究学会の発起人メンバー。専門は社会言語学。消滅危機にある琉球諸語の復興を研究。

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(4) 沖縄大非常勤講師・親川志奈子さん(36)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020702000129.html